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黒い十字架-Schwarz Kreuz-というサイトに設置しているブログです。 内容は黒い十字架の看板キャラによる小話などです。

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届いた荷物

20070607.jpg

 その日、識者の館に荷物が届いた。
 受け取った荷物をなんとなく緋燿が見ているとその受取人が暢気に降りて来た。
「あれ……何? そのダンボール」
「今朝届いた荷物だよ」
「荷物? こんな所に?」
 

 一体誰がと、蒼氷は荷物の差出人を見た。
 その途端に露骨に嫌な顔をする蒼氷。
「蒼氷、何かありました?」
 その蒼氷の後ろからがしっと抱きつく碧風。
「不吉なものが届いてなきゃいいけど……」
 そう言ってダンボールを開封する蒼氷。
「何これ? 荷物? どこからですか?」
「――管理局から」
 それを聞いた碧風も物凄く嫌そうな顔をする。
「碌な物じゃない気がしますね」
「だよね」
 それに同意して中を検める。
 中には……
「服……」
 それを手に掴んで広げて見る蒼氷。
 そして蒼氷と碧風は気付いた。
「これ……前にも貰った気がするんですけど……」
「奇遇だね。僕もそんな気がするよ」
 ダンボールの中に入っていたのは青い服、赤い服、白い服、緑の服の四色だった。
「ああ、でも前よりヴァージョンアップしてるね」
「どこが変わりました?」
 碧風の言葉に蒼氷は帽子を渡す。
「ほら、通信機が帽子部分に内蔵されてる。前は無かったでしょ」
「ああ、本当ですね。これなら頭の輪っかもいらないんですね」
 碧風はそう言って頭の上に浮かんでいる羽のついている輪っかをぐいっと引っ張った。
 それはあっけなく外れる。
 これは神がみんなつけている通信機だ。
 無いと困るのでみんなつけている。
「この服何なんだ?」
 緋燿が尋ねると、碧風が答えた。
 蒼氷は答える気がほとんど――いや、全くない。
「これは聖例会議の時とかに身に付ける正装です。その人によって色が違いますがデザインは一緒ですよ。正式な場所では身に付けなければならないんです」
「人によって色が違う……?」
「はい」
「じゃあ、この荷物って蒼氷だけに届いたわけじゃ……」
 緋燿の言葉に頷く碧風。
「私と蒼氷と緋燿と白雲の分がちゃんと入ってますね」
「碧風がここに無断でいるのもバレバレだね」
「そういえば……そうですね」
 碧風がこの識者の館にいるのは仕事をサボっているからだ。
 だが、上と言うか…………管理局にはバレバレらしい。
「でもどうして一介の神でしかない緋燿や白雲の分まであるのでしょう?」
「僕の付き人だからじゃない?」
「ああ…………そうかもしれませんね」
 緋燿は良く分からなかったが、あまり気にしない事にした。
 そんな緋燿に赤と白の服を押し付ける蒼氷。
「白雲にも渡して来て」
「わかった」
 緋燿が返事をし、動き出そうとしたところ、パラリと何かが落ちた。
 それを手に取る碧風。
「管理局から?」
「はい。やっぱり正装を新調したから送りつけてきたみたいです」
「それ以外に理由ないよね」
「そうですね。それと、緋燿」
「はい。何ですか、碧風様」
「これから正式な場所に行く時や、死神の仕事をする時にはその服を着て行うようにしてください」
「これを?」
「ええ、なんでも、蒼氷の副官という扱いになっているみたいなので、それなりの格好をしろとの事です」
「わかりました」
「白雲にも伝えといて」
「はいはい」
 そう返事をすると今度こそ緋燿は白雲のもとへ向かった。
「着てみます?」
「着なくてもぴったりだと思うけど?」
「でも折角ですし」
 盛大に溜息をつく蒼氷。
「まあ…………届いた荷物が唯の服だったから良かったのかな」
「もっと厄介なものだったら……」
「言っておくけど、今の僕には何も出来ない。向こうも碧風がいるのがわかってるからあえて送ってくるかもしれないけどね」
「そうなったら私が全力でサポートします」
「サポートじゃなくてメインでやってよ」
「…………努力します」
「努力じゃなくて普通にやってよ」
 室内に蒼氷の不満そうな声が響いた。
 今日も識者の館はわりと平和だ。
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