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黒い十字架-Schwarz Kreuz-というサイトに設置しているブログです。 内容は黒い十字架の看板キャラによる小話などです。

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Capriccio 8.焔裁き

 グリモワールについて語り終ったアロイスは、ヴァルターに指示する。
 そして一つのグリモワールを手にする。
 グリモワールの正しい扱い方。
 それは結構細かく記されていた。
 それはグリモワールを扱う上で最低限知っていなければならないこと。











「でも、それじゃあどうやって選ぶの?」
 触れないのでは選ぶことは出来ない。
 アロイスは手に持っていたグリモワールを元に戻した。
 そして言う。
「グリモワールは生きた武器……自分の主人は自分で選ぶ」
「自分で!?」
「そう……自分で、ね」
 見上げるとたくさんのグリモワールが見える。
「目を閉じて――」
 ヴァルターは言われたとおりに目を閉じた。
「両手を前に差し出して――」
 言われるままに両手を前に差し出した。
「感覚を研ぎ澄まして……そうだね、戦っている時のように――」
 すると気配がした。
 一つや二つではない。
 こちらを窺っているかのような、そんな無数の気配が――
(これが、グリモワール?)
「集中して……波長を感じて……自分と同じ波長を――」
 無数にあるグリモワールの中から自分と同じ波長を感じるのは非常に困難だ。
 だが、それでも、探す。
「声を聞いて……自分を呼ぶ声を――」
(声……?)
「それに、応えて――」
(――……何か…………聞こ……え、る……?)
 そうヴァルターが思った瞬間、手に重みを感じた。
「もういいよ」
 言われて目を開けると、手の上には赤い装丁のグリモワールがあった。
「これが?」
「そう……キミだけの武器」
 まじまじと見つめる。
 そして表紙を開いてみた。
 そこには文字がびっしりと書いてあった。
 一番上に少し大きな文字で『焔裁き』と書いてあった。
「ほむらさばき?」
「グリモワールの名前だよ」
「名前……」
「ボクのこれは〝魂砕き〟」
 自分のネクタイについているグリモワールを指して言った。
「名前、あるんだ」
「それはそうだよ」
 当り前じゃないとアロイスは言った。
 そして次に『世界に仇為す熱き炎……全てを灰燼に帰す蒼炎の舞……断絶せよ』と書いてある。
「これは?」
「それは起動言語だよ」
「起動言語?」
「武器の形にする時に必要な言葉。暗記しなきゃ駄目だよ」
「そういえば、ロイも何か言葉を言ってた」
「起動言語の後に名前を呼ぶんだよ。そうすれば、起動する」
 そっとアクセサリーに手を触れた。
〈其は終焉の扉……月は無慈悲に願いを果たす……目覚めよ――〉

   ――魂砕き!


 大きな鎌の形に姿を変えた。
「起動言語は暗記してね。覚えないと使えないから」
「うん、わかった」
「一度起動すると本の姿には戻らないからしっかりと注意事項は頭に入れること」
「あ、ああ」
「もし起動言語が暗記できないようであれば何かにメモっておくといいよ。それだけは絶対に覚えないといけないから」
 ヴァルターはじっと文字を読んでいる。

    グリモワールを扱う上での注意事項
  ・グリモワールは一度起動すると二度と本の姿には戻らない。
   (元に戻すには一度初期化する必要がある)
  ・グリモワールは使用しない場合にはアクセサリーに姿を変える。
   (変わるアクセサリーのパターンは決まっており、自由に変えることは出来ない)
  ・グリモワールは主人以外の使用を一切認めない。
  ・グリモワールを他人に触れさせないこと。
  ・他者が触れ、起動しようとするとグリモワールは封印される。
   (再び使用するためには一度初期化する必要がある)
  ・使用者の死亡したグリモワールを発見した場合、そのグリモワールを手に取り、《解放》と言う。
   (そのグリモワールは即座に製作者の元に転移する)
  ・グリモワールは生きている武器であり、手入れは必要ない。
  ・グリモワールが万が一折れた場合、軍警本部にて、製作者に連絡をとってもらうこと。
   (修復が可能なので粗雑に扱わないこと)
 
    グリモワールの使い方
  ・グリモワールに直接手を触れる。
  ・グリモワールを使用する際には起動言語を紡ぎ、グリモワールの名前を呼ぶ。
   (起動言語の後に一定以上の時間が経過した場合、名前を呼んでも起動しない)
  ・アクセサリーに戻すためには心の中で《解除》と思えば良い。
   (口に出しても可)
  ・武器の姿のグリモワールには固有の能力が存在する。
  ・意識を集中し、グリモワールと同調することによりその能力を使用することができる。
  ・威力は使用者の精神力による。
 
 最後まで読み終わると頭を上げた。
「読み終ったー?」
「うん」
「理解した?」
「……うん、大体」
「解らないことがあったら質問してくれてもいいよ」
「グリモワールって壊れたりするの?」
「ああ、それね。滅多にあることじゃないよ」
 パタパタと手を振った。
「余程のことがない限り壊れたりしないよ? 壊れるのは……そうだなぁ…………グリモワールの限界を超えるほどの精神力を加えた時ぐらいだから……人が使う限り壊れないと思うよ」
 なるほど、それは壊れたりしないだろう。
「質問は終わり? まぁ、気になることがあったらその時に聞いてもらえればいいけど」
「ああ、その……これ、値段は――」
 恐る恐るといった感じでヴァルターは尋ねた。
「値段? 裏表紙に書いてあるよ」
 ひっくり返してみる。
 そしてヴァルターは石化した。
 衝撃的だった。
 普通に働いたら、とてもじゃないが払えないよな金額だった。
「出世払いだからね」
 ニッコリとアロイスは告げた。
 どれだけ彼のもとで働けばいいのか、ヴァルターには全く解らなかった。
「じゃ、一回起動してみようか」
「ああ、うん」
 ぎゅっとグリモワールを握りしめる。
 そして起動言語を紡ぐ。
〈世界に仇為す熱き炎……全てを灰燼に帰す蒼炎の舞……断絶せよ――〉

   ――焔裁き!


 グリモワールが紅く輝き、姿が変わる。
 赤い刀身を持つ、大きな剣になった。
 両手で握って使用するタイプの剣だろう。
 とても片手では振り回せない。
「この大きさにしては、軽いね」
「グリモワールを普通の武器と一緒にしちゃダメだよ」
 言われて頷いた。
 確かにその通りだ。
 軽く振ってみるが、やはり軽い。
「これがグリモワール……」
「どう? 凄いでしょ?」
「ああ、うん」
 なんと言えばいいのか分からないようだ。
「まぁ、戦闘で使った方がわかりやすいだろうね」
 実際に使ってみなければ真価は分からないだろう。
「じゃ、解除して」
「うん」
 心の中で呟くと、大剣は指輪になり、右手の人差し指にはまった。




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