黒い十字架-Schwarz Kreuz-というサイトに設置しているブログです。 内容は黒い十字架の看板キャラによる小話などです。
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「なぁ、白雲さん」
「何？ 緋燿」
家事も一通り終わってリビングでまったりとしている時に、緋燿が白雲に声をかけた。
今日はわりと時間が余ったほうだ。
白雲がうっかり食器を割った数も少なかったし、今日は買いだしに行く必要もない。
いつもなら休む間もなく夕方になってしまっている。
こんなに余裕があるのは久しぶりだ。
だから気になっていたことを聞こうと思った。
「蒼氷って…………仕事してるように見えないんだが……何やってるんだ？」
「ええっと～…………」
それを聞いた白雲は考え始めた。
「まさか…………何もしてないのか？」
「いえ！ そんな事はないです！！」
それを慌てて否定する白雲。
「じゃあ何してるんだ？」
「あ～…………その、ボクも詳しい事は知らなくて――」
「白雲さんも知らないのか……」
「でも、碧風様なら知ってると思います」
碧風は蒼氷の幼馴染で蒼氷と同じSSSランクの神だ。
知っていてもおかしくはない。
「碧風様かぁ……」
「何ですか？」
緋燿が呟くと後ろから返事が返ってきた。
「碧風様」
そこには片手に紅茶を持っている碧風がいた。
これからテラスにでも行こうとしていたのか……
「それで、呼びました？」
「あー…………はい。呼びました」
緋燿がそう言うと、碧風は空いている席に座った。
「何でしょう」
「――蒼氷って普段何の仕事してるんですか？」
緋燿は思い切って聞いてみた。
「ああ、蒼氷かぁ…………」
「そりゃ、偶にしぶしぶ聖例会議とかに出席しに行くけど…………それ以外で仕事をしてる感じがまったくしないんですけど……」
それを聞いた碧風は笑った。
「確かに、普段は何をしているふうにも見えないよね」
でも確かに役目は果たしているのだと碧風は言う。
「何をしているのか具体的に言ってもあまり納得は出来ないかもしれないけど……」
そう前置きをしてから碧風は語った。
「蒼氷はここにいることが仕事だから」
ここに居れば他に何をしていようがかまわないのだと、語る碧風に緋燿は黙り込んだ。
居ることが仕事とはどういうことなのか、イマイチわからなかったからだ。
「つまりね、ここは特別な場所なの」
「ここは特異点なんですよね」
「そう…………ここは特別な場所」
「特別な場所？」
「ここは日の射さない常闇の場所……ここは神々の力の源になる大切な場所――」
「力の源――」
「そう……ここの力を増幅させる事が出来るのは知識と生命の神である蒼氷だけ…………でも蒼氷は力を失ってしまっているから遠くで、何かをしながらにしてこの場所の力を増幅させる事が出来なくなってしまったんです」
「だから、ここに居ることが仕事――」
「そう…………ここで蒼氷が過ごしているだけで神達の力は失われず、世界を守り続ける事が出来る」
まるで牢獄のようだけど、と碧風は言った。
「だから、蒼氷はずっとここに……」
「だからあまり蒼氷はここから動きたがらないでしょう？」
言われて思う。
たしかに蒼氷は雑用という雑用は全て緋燿と白雲に押し付けてここから動かない。
「でも、思っていたよりも楽しそうだったので安心していますけどね」
確かに、非常に毎日楽しそうだ。
厄介ごと、面倒ごとは全て緋燿と白雲に押し付けて自分は昼間から酒飲んだり本を読んだりしている。
「蒼氷はここに居る事が仕事だから、別に何かをしているわけじゃないよ」
つまり、蒼氷はわりと楽な仕事をしているようだ。
そんな理由で日々こき使われている身としては少々複雑な思いの緋燿だった。
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