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黒い十字架-Schwarz Kreuz-というサイトに設置しているブログです。 内容は黒い十字架の看板キャラによる小話などです。

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第十一話:白雲編1 蒼氷Ver.
 珍しく識者の館にヒトが訪ねてきた。
 蒼氷が下を覗き込むと見知った顔がいた。
 それを見た蒼氷はテラスから降りた。

 それは緋燿にとっては災難の始まり。
 だが、蒼氷にとってはそうではなかった。










「こんにちは」
 元気な声が下から聞こえる。
 聞き覚えのある声だ。
 そう思ってテラスから下を覗き込んだ。
「あれ? 白雲じゃない」
 白雲を見つけた僕はテラスから降りた。
「お久しぶりです。蒼氷様」
「うん、そうだね。何かあったの? 黒穢の元を離れるなんて……」
 白雲は制裁部の文神だ。
「はい、その黒穢様の命令でここに来ました」
 黒穢の?
 珍しいと思いながら白雲が手渡してきた封筒を開ける。
 中の手紙を読むと――
 
 
    久しぶりじゃな、蒼氷。
    折り入って頼みがある。
    白雲のことじゃ。
    白雲は相変わらずなのじゃ。
    正直、この制裁部でやっていくのは厳しいと言わざるを得ない。
    よって、少々修業を……というかあのドジを何とかしてくれ。
    あのドジさえよくなれば今すぐにでも采神にできるのじゃ。
    制裁部は最近物凄く忙しい。
    ここで構ってやれる場合ではないのじゃ。
    では、よろしく頼む。
 
 
「…………ここでしばらく修行しろって?」
「…………はい。黒穢様に怒られてしまいまして……」
 落ち込んでいる。
「あ~、黒穢は厳しいからね」
 それに尋常じゃないくらい忙しくなってきてるらしいし……
「ボクが至らないだけだと思います」
 ドジさえなければねぇ~……
「じゃあ、またここで働いてもらおうかな」
「はい! よろしくお願いします」
 きっちりとした礼をする。
 ドジ以外に突出した欠点はないからね、白雲は。
 頭も良いし、要領も悪くはないはずなんだけど……
 ああ、そうだ。
 緋燿に紹介しないと。
「緋燿、彼は昔僕のところで働いていたことがあるんだ。借りてただけだからしばらくしてから返したけど」
 でも結構借りちゃったんだよね。
 体調が物凄く優れなかった時だから仕方なかったんだけど。
「白雲です。よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく」
「白雲、緋燿には遠慮しなくて良いからね。白雲のほうがランク高いんだから」
 白雲はドジだが頭が良いのでSランクだ。
 だが白雲の表情が曇った。
「そうですか? でも、ボク迷惑掛けるだろうし……」
 まぁ……そうだろうね。
「大丈夫だよ。僕は一切気にしないから」
 別に物がいくら壊れようとも気にならないしね。
「そう言ってくれるのは蒼氷様だけです」
 …………そうだろうね。
「じゃあ、ボク掃除しますね!」
 白雲は良い子だよね。
 ……空回り気味だけど。
「ちょっと、緋燿」
 白雲を見送った後、その姿が見えなくなってから緋燿の腕を掴んで引き寄せる。
「彼、悪気は一切ないんだ」
 何を言ってるんだ? といった表情をしている緋燿。
「いつも一生懸命なんだけどなかなか実を結ばないというか……」
 叱ってもどうにもならないだろうし……
「だから、何をやっても責めないでやってね」
 ドジが叱るぐらいでどうにかなるぐらいだったら黒穢も苦労はしなかっただろう。
 そして、ここに来る必要もなかった。
 
「なんの話だ?」
 
 まぁ……いきなりこんなことを言われてもわからないか。
「彼ね、何もないところでよく転ぶんだ」
「転ぶ……それが何か問題あるのか?」
「うん。物持ったままでも転ぶからお茶こぼしたり書類ぶちまけたり……
 でもまあそれはまだ序の口だね」
 そして以前白雲に来てもらった時のことを思い出す。
「皿を洗うと三枚に一枚は落とすし、掃除をすると必ず物を落とすし、料理にいたっては食べられるもので調理したはずなのに危険な物体エックスが出来上がるんだ。それが結構毒性が高くて……どうやったら毒の一切入ってないものからあれだけの毒素を作り出せるんだろうって感心しちゃった」
 僕の話を聞いて露骨に緋燿の顔が引き攣った。
 
「それ、食べたのか?」
「うん。白雲も普通に食べてたけど?」
 
 緋燿が一歩引いた。
「僕や白雲は食べ物から霊素や生気を摂取してるから食べても平気だけど、緋燿は危ないかも」
 食べても全然大丈夫だから僕は全く気にしなかったんだよね。
 そうでなければ別の人材を頼んでるよ。
 黒穢も病人に止め……というか僕に止めを刺すようなまねは絶対にしないだろうし。
 
「だから、命が欲しかったら白雲を台所には立たせない方が良いと思うけど?」
 
 がっしゃーん!!
 
 破壊音が響く。
「あ~、さっそく壊してるね」
 今の音からすると食器かなぁ?
「きっと失敗ばっかりするから黒穢に追い出されたんだよ」
 期限も書いてなかったし……何時までいるかわからないね。
 まぁ、僕は別に平気だけど……
 館の中が賑やかになりそうだと思いながら、僕はテラスに戻った。




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