黒い十字架-Schwarz Kreuz-というサイトに設置しているブログです。 内容は黒い十字架の看板キャラによる小話などです。
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第十三話:惨劇の料理編2 蒼氷Ver.
白雲の猛毒料理を食べて倒れた緋燿。
その緋燿のそばにいる蒼氷。
蒼氷は生活力がないため、何をするわけでもない。
だが、悲劇は歩いてやって来た。
「ここ……は――?」
ようやく緋燿の意識が戻ったようだ。
「気がついたみたいだね」
そう声をかけるとゆっくりとした動きで僕を見た。
「ここは……」
「緋燿の部屋だよ」
「俺……の……?」
「何があったのか覚えてる?」
「何が……」
そしてしばらく考えている。
起きぬけでぼうっとしているのだろう。
「そうだ。俺……白雲さんの料理で――」
「そう。一口でばたんきゅ~。白雲が慌てちゃって大変だったよ」
誤魔化したけど。
「二日も寝てたんだよ」
そう言うと驚いていた。
料理食べたぐらいでそんなに寝込んだら驚くか。
「ここに運んでくれたのは?」
「もちろん白雲だよ。僕じゃ運べないからね」
「白雲さんって――」
やっぱり非力に見えるよねぇ……
「白雲はああ見えてかなりの怪力だよ」
実際、大の男も平然と抱えて歩けるほどの怪力だ。
「白雲さんが?」
「うん。いつも大量の書類を抱えて廊下を歩いたりしていたからね」
多忙な制裁部ではよくあることだ。
制裁部では体力なければやっていけない。
「まぁ、白雲は絶対こけるけど」
それはもう諦めるしかないと僕は思うんだけどねぇ。
あれをどうにかすることが果たして出来るか?
その一点に関して言えば頭の痛い問題だ。
「あの…………白雲さんは――」
「白雲は緋燿が倒れてからずっと看病をしててくれたんだよ」
いろいろ破壊して、たくさん空回りしてたけど。
「蒼氷は一体何を――?」
「ここでただ本を読んでいただけだよ」
僕は生活力がないと言われている。
期待するだけ無駄だと理解してもらいたい。
ただし――
「何もしてないけど、一応騒音防止と悪臭防止はしてあげてるよ」
そう言った瞬間、緋燿の顔色がさらに悪くなった。
まぁ……当然か?
「騒音って?」
悪臭の理由について理解した緋燿はそう尋ねてきた。
緋燿もその位は理解してもよさそうなんだけどなぁ。
「勿論白雲が皿割ったり、物落としたり、いろいろやって空振りしている音だよ」
緋燿がふとんに倒れ込んだ。
倒れたい気持ちもわからないではないかなぁ?
そう思いながら僕は術を一時的に狭める。
真っ青な緋燿。
「こ…………この臭いは――」
「白雲が料理作ってるんだよ」
緋燿が倒れているんだから白雲しか料理を作る人がいないだろう?
「料理……」
口に手を当てた。
また倒れそうだ。
「緋燿のために最近は消化にいいものばっかりだよ」
僕が見てもさっぱりわからないけど、白雲がそういうのだからそうなのだろう。
白雲の料理は見た目が凄まじいので言われても料理名と結びつかない。
――コンコン。
白雲が来たようだ。
緋燿の顔が強張ったが、僕は気にせず返事をする。
「どうぞ」
白雲が料理を持ちながら何とか部屋に入ってくる。
必然的に緋燿に目がいった。
そして破顔した。
「良かった。目が覚めないから心配してたんです」
そうだよね。物凄く心配していたもんね。
そんなに仕事がキツイのかと凄く心配していた。
スッと緋燿に手に持っていた料理を差し出した。
ここで緋燿が起きていないとそのうち僕の胃袋に入ることになるんだけど、今は起きている。
だから白雲は僕に渡したりしない。
「こ…………これは――?」
「これはトマトリゾットです」
自信満々に言い切った。
とてもそうは見えないけど。
「どうぞ」
悪魔の一声だっただろう。
でもさすがに全てを好意でやっている白雲にこれは毒だからやめてやれとは……言えないんだよねぇ。
それは僕だけではない。
だからこそ、この料理を止める人がいなかった。
「まだ体調が悪いですか? じゃあ、ボクが――」
恐らく、ニッコリと、悪意の全くない笑顔を緋燿に向けているのだろう。
緋燿の笑みが引き攣っている。
しばらく硬直状態だったが……………………食べた。
そして撃沈。
そうだよね……言えないよね。
途端に慌て始める白雲。
「まだ体調が悪いみたいだからそっとしておいてあげて」
そう言うと白雲は、物凄く心配そうな顔をしながら下がった。
緋燿、また当分目覚めないんだろうね。
僕はそう思いながら、手に持っていた書物に目を戻した。
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